My Chronic Delusion

音楽や吹奏楽、そして下ネタや二次創作が多めですね。

【ヒビキノ】Are you happy with now?

【轟←小沼+石橋、石橋視点】


「小沼、また轟に運ばれてたでしょ」
朝練の後、ホームルーム前の少しざわついた教室で、オレはカバンを肩から提げたまま小沼の席の前に立っていた。目の前の彼は、オレの言葉で顔を紅くして「うるさい」とそっぽを向いてしまった。
「そんなことより石橋。お前、最近パー練に参加してねえだろ。来いよ」
机をトントンと鳴らし遊ばせている小沼の指先へ目を落とす。トントン、トントン。それは確か、今やってる曲の低音のリズムだな、と頭の片隅でぼんやりと考え、適当に言葉を放る。
「オレ今週は木低と練習してるよ。パー練場所遠いじゃん」
それに、小沼だって轟と二人の方が色々とアレじゃない?と続けると、机を叩いていた指先が止まった。
「別に……。何もしねえよ」
「ふうん。そばにいられれば、それで満足?」
問いかけると、小沼はこっちを向いてくれた。少し動揺したように揺れる瞳が、いつもは後輩ばかりを追いかけている瞳が、オレのそれに飛び込む。この、綺麗な視線に気づかない轟も轟だが、あの性格ならそれも当然かな。だからオレは友人として、小沼へチャンスを与えているのだけれど。
「ま、小沼が現状維持を望むなら、それでいいんだけど」
そう言えば、小沼は苦虫を噛み潰したような顔をした。机の上の手がぎゅっと握り締められている。強く握っているのか、白くなる手。オレは彼のその手に、自分の手を重ね、温めるように包んだ。
小沼が轟のことを好きなのはオレの目から見ても明らかで、進展を望んでいることもわかっていた。ただ、小沼は恐れている。轟へ想いを伝えて、その同性への恋情的な想いが異端だと気味悪がられ、決定的に嫌われてしまうのではないか、と。そんな大きなリスクを抱えて次に進むほどの勇気を小沼は持ち合わせていない。だからオレも機会を提供するだけで無理強いはしない。しないのだけれど。

小沼は、今に満足してるの?