My Chronic Delusion

音楽や吹奏楽、そして下ネタや二次創作が多めですね。

【ヒビキノ】Please say to me face to face.

【千丸×香田(※付き合ってる)】


「コーダさん、本当にオレのこと好きなんですか」
鷹揚のない声で素っ気なく言い放ってみれば、コーダさんは肩をビクリと大きく跳ねさせた。今の今まで流れるように言葉を紡いでいた口をきつく閉じ、怯えたような泣きそうな顔でオレを見つめてくる。そんな小学生みたいな顔されても困るんすけど。
コーダさんの声が途切れた教室は、一度に温度を失ったように静まって、一瞬だけ時が止まったようだった。
「何で?俺のこと疑ってる?」
「別に、疑ってるとか、そういう訳じゃないんすけど」
「でもアキラ、今怒って」
「怒ってませんて。ただ、コーダさんが他の男の話するの聞いてるのもキツイなーって」
それだけです。またつっけんどんに言って、オレは手元のリードにナイフをあてる。コーダさんがこちらを恐る恐る覗いているのに、オレの加虐心のスイッチが入った。オレ達はお互い束縛を嫌うからある程度の自由は許すけれど、小さな嫉妬がオレの中に生まれるくらいまでこの人を遊ばせているわけにはいかない。
それに、オレが優位なこの状況を、もっと楽しまなければ。動き出した空間にシュッシュッと単調な音を満たしながら、オレは口を開いた。
「オレは、コーダさんが浮気しないって信じてるんすけど」
「そりゃ、しねーよ。今はさ、その。あ、アキラが……」
たどたどしく言葉を続けるコーダさんを、態度はそのまま横目で盗み見る。顔を紅く染めて、恥ずかしいんすか?あーやべ、楽し。
「オレが、何すか」
「いや……。あの、さあ。わかりきってるくせに」
「わかりませんねえ。ハッキリ口にできないなんて、やっぱオレより矢乙女さんといる方がコーダさんにとって自然体なんですか?」
「なんでそんなこと言うんだよ!ちげーよバカ!」
「じゃあ、オレが何なんですか?」
「あ、う……」
弱々しいコーダさんの呻き声にオレは顔をあげる。耳まで真っ赤にしてうつむく彼を見て、それだけで満足。この人下ネタ平然とふってくるクセに、こーゆーのには弱いなんて。年上なのに、かわいいと思ってしまう。
「コーダさん、ちゃんと面と向かって言ってくださいね」
多分自分、顔にやけてる。ポーカーフェイスだとかなんとか言われるオレの固まった表情筋も、この人の前だとゆるゆるしてんだから。
たっぷり時間をかけて躊躇ったコーダさんが、ふらりとオレのそばまでやってきて、顔をすっと近づける。綺麗、とその顔に気をとられていたら、「アキラが特別に好きだって」と小さな呟きがストンと耳に転がってきて、唇に柔らかいキスが降る。軽いリップ音が静かな空間で弾けた。
呆気にとられてしばらく石になっていたら、コーダさんはあっという間にオレと距離をとり、マンガ本に顔をうずめていた。脳が活動を再開させ、感情が追いついてきて、今度はオレが顔を真っ赤にさせてしまった。
ああもう、コーダさん大好きです。